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「欧米でも、若者の収入は日本と同じように減っていると言われています。でも、収入低下が結婚を思いとどまらせるのではなく、かえって結婚を増やしている」と、山田さんは言う。
理由はこうだ。欧米は南欧諸国をのぞいて、独身男女のほとんどが独り暮らし。ひとりで生活するのが苦しいから、結婚や同棲で一緒になって、食費、住宅費、光熱費などをシェアしようということになる。一方、日本や韓国や台湾、イタリア、スペインなどは、独身者が親と同居している率が高い。だから結婚しなくても生活できる。
「収入の低い男性と結婚するより、収入の高い親と住んでいたほうがいいと思ってしまう。これが私のパラサイトシングル説です」
(中略)
たとえば、こんな現象にも、収入低下が少なからず関わっていると、山田さんは考える。「恋愛に積極的になれない男性が増えたこと」だ。
「文化的な要素もあると思いますが、とにかく恋愛に消極的な男性が激増しているというのは感じます。たとえば私の友人で、若者雑誌の恋愛記事を分析している研究者がいますが、バブル崩壊以降、女性へのアプローチの姿勢が大きく変わったのが、雑誌の記事を通しても見て取れるといいます。80年代は男性から積極的に女性をものにしようという記事が多かったのに対して、バブル崩壊以降は、アクションをおこしても『好意を持っていることをそれとなくにおわせる』くらい。待ちの姿勢の記事がほとんどです」
かたや女性は「収入が安定しない男性とは結婚したくない」という志向を持っている。恋愛においても同様。
「すべての恋愛が結婚を前提にしているわけではないが、少なくとも結婚してもいい人でないとデートすらしないのが日本女性。つきあう段階で、男性をスクリーニングしがちなんですね。経済力がない男性は、女性からスクリーニングされるのをわかっているから、積極的に出ても無駄と思ってしまう。簡単に言うと、自信がないということですね」
(中略)
「結婚生活において大切なこと」を、日本、韓国、アメリカ、フランス、スウェーデンの男女に聞いたところ、5か国とも、男女で一番多かった答えは、「相手に誠実なこと」。ところが、続く二番目に「十分な収入」という答えが多かったのは、日本と韓国だけだった。逆に「性的魅力を持ち続けていること」と「夫と妻双方が仕事をもつこと」と答えた率は、日本が5か国中最低という結果に。
「昔は世界中が、男は仕事、妻は主婦でよかった。イギリスなんて9割が専業主婦という時代もあったんです。アメリカも1950年には75%と、日本より専業主婦率は高かったわけですよ。ところが、時代は変わった。欧米は女性が働く社会への転換が着実に進んでいるものの、日本ではまだ、男性の収入に頼りたい気持ちが女性に根強いんですね。これが非婚の増加を生んでいる、3つの方程式のひとつです」
(中略)
そのため、安定男子をめぐる競争は激化し、青田買いに走る女性も出てくる。
(中略)
「それも格差の壁が高くなったことと無関係ではないですね。昔は、若い頃は冒険をしても、いつか就職して出直すという選択もできた。一見、リスクフルな生き方も、ある程度ヘッジされていたのです。ところが今は、ひとたび非正規雇用の道を選んでしまえば、一生非正規雇用のまま。勝ち組と負け組の間の壁は、ますます厚くなり、安定する人はより安定し、不安定な人はより不安定になる。男女とも保守化するのは、当然のことですね」
第4回 「日本人と結婚」 山田昌弘(社会学者)


「欧米でも、若者の収入は日本と同じように減っていると言われています。でも、収入低下が結婚を思いとどまらせるのではなく、かえって結婚を増やしている」
と、山田さんは言う。

理由はこうだ。欧米は南欧諸国をのぞいて、独身男女のほとんどが独り暮らし。ひとりで生活するのが苦しいから、結婚や同棲で一緒になって、食費、住宅費、光熱費などをシェアしようということになる。一方、日本や韓国や台湾、イタリア、スペインなどは、独身者が親と同居している率が高い。だから結婚しなくても生活できる。

「収入の低い男性と結婚するより、収入の高い親と住んでいたほうがいいと思ってしまう。これが私のパラサイトシングル説です」

(中略)

たとえば、こんな現象にも、収入低下が少なからず関わっていると、山田さんは考える。
「恋愛に積極的になれない男性が増えたこと」だ。

「文化的な要素もあると思いますが、とにかく恋愛に消極的な男性が激増しているというのは感じます。たとえば私の友人で、若者雑誌の恋愛記事を分析している研究者がいますが、バブル崩壊以降、女性へのアプローチの姿勢が大きく変わったのが、雑誌の記事を通しても見て取れるといいます。80年代は男性から積極的に女性をものにしようという記事が多かったのに対して、バブル崩壊以降は、アクションをおこしても『好意を持っていることをそれとなくにおわせる』くらい。待ちの姿勢の記事がほとんどです」

かたや女性は「収入が安定しない男性とは結婚したくない」という志向を持っている。恋愛においても同様。

「すべての恋愛が結婚を前提にしているわけではないが、少なくとも結婚してもいい人でないとデートすらしないのが日本女性。つきあう段階で、男性をスクリーニングしがちなんですね。経済力がない男性は、女性からスクリーニングされるのをわかっているから、積極的に出ても無駄と思ってしまう。簡単に言うと、自信がないということですね」

(中略)

「結婚生活において大切なこと」を、日本、韓国、アメリカ、フランス、スウェーデンの男女に聞いたところ、5か国とも、男女で一番多かった答えは、「相手に誠実なこと」。ところが、続く二番目に「十分な収入」という答えが多かったのは、日本と韓国だけだった。逆に「性的魅力を持ち続けていること」と「夫と妻双方が仕事をもつこと」と答えた率は、日本が5か国中最低という結果に。

「昔は世界中が、男は仕事、妻は主婦でよかった。イギリスなんて9割が専業主婦という時代もあったんです。アメリカも1950年には75%と、日本より専業主婦率は高かったわけですよ。ところが、時代は変わった。欧米は女性が働く社会への転換が着実に進んでいるものの、日本ではまだ、男性の収入に頼りたい気持ちが女性に根強いんですね。これが非婚の増加を生んでいる、3つの方程式のひとつです」

(中略)

そのため、安定男子をめぐる競争は激化し、青田買いに走る女性も出てくる。

(中略)

「それも格差の壁が高くなったことと無関係ではないですね。昔は、若い頃は冒険をしても、いつか就職して出直すという選択もできた。一見、リスクフルな生き方も、ある程度ヘッジされていたのです。ところが今は、ひとたび非正規雇用の道を選んでしまえば、一生非正規雇用のまま。勝ち組と負け組の間の壁は、ますます厚くなり、安定する人はより安定し、不安定な人はより不安定になる。男女とも保守化するのは、当然のことですね」

第4回 「日本人と結婚」 山田昌弘(社会学者)