これは難解な作品とは言えるだろうが、作家の独創性を特権的なものと考えがちな純文学に対する風刺の意図も含まれた一種の科学的寓話として読め、とてもユーモラスでもある。
作中には物理用語をちりばめて、でたらめな内容の論文をそれらしくでっちあげて、思想系 の学術誌に投稿したら掲載されてしまったというソーカルのスキャンダラスなケースへの言及があるが、いわゆる「純文学」にも似たようなことがあるのではないか?
「わたしたちはあまりにも簡単に出鱈目を書けてしまうと思わないかね」という叔父の言葉は、おそらく作者自身と、文学という制度との両方に向けら れた皮肉になっているのだろう。