“当時の音楽シーンは、格好だけロックっぽくて中身は歌謡曲だったグループ・サウンズが流行った後、クラプトンやストーンズの即興フレーズを本人達よりも正確に弾くようなコピーバンドが主流でした。
そうした風潮に反発して結成したのが、“はっぴいえんど”です。
それまでの歌謡曲やフォークは、恋や青春などのキーワードを並べただけのラブソングが多くて、僕にとっては絵空事だったんです。
はっぴいえんどでは、安直なラブソングではなく、身近にある風景や出来事を愛おしく想う気持ちを表現することを心がけました。だから、「夏なんです」や「風をあつめて」は僕にとっての“ラブソング”です。「夏なんです」は、地面との距離が近くて、空は高くて広いという少年の目線で夏休みや入道雲への愛情を素直に表現できたんじゃないかな。
歌詞作りは、曖昧で複雑な人間の感情の中から余計なものを削いで「上澄み」をすくい取る仕事だと思っています。はっぴいえんどでは、“ことば”や“うた”を通して、生や死など人間の本質に関わる問題について答えを出そうと作詞に取り組んでいました。
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はっぴいえんど時代は、売れることは考えないで自分達の信じる音楽の質を追求すれば良かったけど、ビートルズと比較した時に圧倒的に違ったのが、「量」(売上枚数)でした。その時の反省をこめて、作詞家になってからは「質」と「量」の両方を追求することを心がけました。
音楽業界の中には「量のためには質を落とせばよい」というような暗黙の了解がありましたが、僕はそうした風潮に一貫して闘いを挑んできました。安易な粗製濫造コピーで下品な作品を残したくなかったから。松田聖子をはじめ斉藤由貴、薬師丸ひろ子など多くの歌手の作品を手がけましたが、誰かを真似したような「亜流」を作らないことが、自分のプライドでした。僕の詞を歌うことでそれぞれの歌手が全く違った個性の生命体として輝けるとしたら、とても嬉しいことです。
今までに2000作品以上を作ってきて感じるのは、コツコツと作品を積み重ねていく姿勢がとても大事だということ。人間っていきなり大きな岩を置くことはできないけど、小さな石を丹念に積んでいけば、後世に残るようなピラミッドや古墳を作れるかもしれないんです。”
